mac の TeX環境を texlive2023 (BasicTeX) に更新したので手順をまとめます.
この記事は以下のエントリを macOS と Tex Live 2023 に合わせて更新・加筆したものです.
- https://pyopyopyo.hatenablog.com/entry/2022/04/06/211116 (TeX Live 2022の記事)
- http://d.hatena.ne.jp/pyopyopyo/20140815 (TeX Live 2014の記事)
BasicTeX
パッケージはMacTeXのサブセット版である BasicTeX を使いました.
MacTeXは全パッケージをインストールすると 5.2GB以上のディスク容量を消費します *1.
一方サブセット版である BasicTeX は最低限のパッケージしかインストールしません.必要な容量は 245MB程度です*2
不足パッケージは後から簡単にインストールできるので実用上の問題もありません
ダウンロード&インストール
https://tug.org/mactex/morepackages.html から basictex.pkg をダウンロードします
サイズはたったの90MB *3ですのでダウンロードはすぐに終わるはずです.
これをインストールします
なおMacTeXは
- 2023 通常版 /usr/local/texlive/2023
- 2023 BasicTeX /usr/local/texlive/2023basic
- 20212BasicTeX /usr/local/texlive/2022basic
という感じでディレクトリを分けてファイルを配置するので,異なるバージョンのTeX環境を混在できます.
デフォルトのTeX環境の選択は,"TeX Distribution"というアプリで行います.
(メニューの”システム環境設定"にアイコンがあります.Spotlight検索で TeX Distribution でも起動できます)
このアプリは
というシンボリックリンクを管理していて,これらリンクでデフォルトのtex環境を選択する仕組みになっています.
たとえば basictex.pkg をインストールすると,/Library/TeX/texbin のリンク先は
$ readlink -f /Library/TeX/texbin
/usr/local/texlive/2023basic/bin/universal-darwin
という感じで /usr/local/texlive/2023basic/bin/universal-darwin になります
初期設定
basictexをインストールしたら,必要なパッケージを追加インストールします
方法は二つ
あります.
ここでは,説明が簡単,という理由でCUIを使います.
まずターミナルを起動します.
念の為,パスが正しく設定されているか確認します
$ which tlmgr /Library/Tex/texbin/tlmgr
tlmgr コマンドにパスが通っています
念の為 tlmgr コマンドの実体も確認しましょう
$ redline -f `which tlmgr` /usr/local/texlive/2023basic/texmf-dist/scripts/texlive/tlmgr.pl
ちゃんと 2023basicの tlmgr を使っています
以下コマンドでパッケージを更新します
$ sudo tlmgr update --self --all
オプションの意味はそれぞれ次のようになります.
- --self tlmgr 自身を更新する
- --all インストール済みパッケージを更新する
最後に,個人的に良く使うパッケージを追加インストールします.
$ sudo tlmgr install type1cm subfigure dvipdfmx multirow xstring logreq biblatex latexmk biber pxjahyper
日本語環境の設定
日本語の設定を行います.
用紙サイズの設定
デフォルトをA4サイズにします
$ sudo tlmgr paper a4
日本語用パッケージのインストール
メタパッケージ collection-langjapanese をインストールすると,日本語関連のパッケージが一括でインストールできます.しかし collection-langjapaneseをインストールすると日本語フォントが大量にインストールされ,フォントだけで700MBほどディスクを消費します
macOSのヒラギノフォントを利用する場合,この700MBは無駄になります.
そこで collection-langjapanese はインストールせずに,必要なパッケージだけをインストールする方針でセットアップを行います.
日本語を扱う際,最低限必要なパッケージは
でしょう.今回はとりあえずこれだけ入れて,後のパッケージは必要になった時に追加インストールすることにします
$ sudo tlmgr install ptex platex jsclasses
次に,日本語フォントのセットアップを行います
TLContirb リポジトリの追加登録
ヒラギノフォントなどのmacOS 同梱のフォントを使うための設定です
ライセンスの関係でmacOS 同梱のフォントを使うためのパッケージ達は別リポジトリ( TLContrib )へ分離されています.
そこでまずはこのリポジトリを登録します.
$ sudo tlmgr repository add http://contrib.texlive.info/current tlcontrib $ sudo tlmgr pinning add tlcontrib '*'
日本語フォント周りで重要なパッケージは
- cjk-gs-integrate-macos (cjk-gs-integrateのmacOS版,フォントの設定を行うスクリプトです)
- japanese-otf-nonfree japanese-otf-uptex-nonfree ptex-fontmaps-macos
- cjk-gs-integrate adobemapping
- haranoaji haranoaji-extra (フォント)
です
まとめてインストールします
$ sudo tlmgr install cjk-gs-integrate-macos japanese-otf-nonfree japanese-otf-uptex-nonfree ptex-fontmaps-macos cjk-gs-integrate adobemapping haranoaji haranoaji-extra
フォントの登録
cjk-gs-integrate-macos というスクリプト(cjk-gs-integrate のmacOS版)がインストールされているはずです.
これを使って macOS のフォントを登録します
$ sudo cjk-gs-integrate --link-texmf --cleanup $ sudo cjk-gs-integrate-macos --link-texmf --force $ sudo mktexlsr
登録済みフォントの確認
フォントの設定用に kanji-config-updmap-sys というスクリプトがインストールされます.
このスクリプトで現在の設定を確認します.
$ sudo kanji-config-updmap-sys status
以下の出力が得られます
CURRENT family for ja: haranoaji (variant: -04) Standby family : ms Standby family : yu-win10
フォントの変更
pdfに埋め込むフォントを指定します
texlive 2020 で導入された「原ノ味フォント」を指定する場合は次のようにします.
$ sudo kanji-config-updmap-sys --jis2004 haranoaji
その他こまごまとした設定
自動で extractbb が実行されるようにする
以下の内容で /usr/local/texlive/texmf-local/web2c/texmf.cf を用意します
shell_escape_commands = \ bibtex,bibtex8,bibtexu,upbibtex,biber,\ kpsewhich,\ makeindex,mendex,texindy,xindy,\ mpost,upmpost,\ repstopdf,epspdf,extractbb
古い TeX環境の削除
uninstallは簡単です
MacTex 2019 を消したい場合は /usr/local/texlive/2019basic をディレクトリ毎削除するだけです
$ sudo rm -rf /usr/local/texlive/2019basic
トラブルシューティング
- pdfに画像が貼れない/gsコマンドが無い
- ghostscript (gsコマンド) がインストールされていないと dvipdfmx 経由で作成する pdf に画像が貼れない場合があります.ghostscript をインストールするには https://tug.org/mactex/morepackages.html の mactex-additions.pkg から ghostscriptを選択してインストールするのが楽そうです.
- LaTeX It を使いたい
- gsコマンドが必要なので,あらかじめ上記の手順でghostscriptをインストールして http://www.chachatelier.fr/latexit/ からdmgをダウンロード,インストールする.
- TeX Live Utility.app を使いたい
- https://code.google.com/p/mactlmgr/
- dvipdfmx がCould not find encoding file “H”. というエラーを出す
- adobemapping パッケージをインストールすると直ります
- 日本語フォントが使えなくなった
- Tex live 2018 でフォント周り(パッケージ構成やコマンド名)に少し変更が入っているようです.上記手順を参考にフォント周りの設定を見直してください
まとめ
インストール後の /usr/local/texlive/2023basicのサイズは 612MBでした.
参考までに
- /usr/local/texlive/2022basicのサイズは 613MB (universal 対応のためバイナリのサイズが増えたとおもわます)
- /usr/local/texlive/2021basicのサイズは 537MB
- /usr/local/texlive/2020basicのサイズは 585MB
- /usr/local/texlive/2019basicのサイズは 586MB
- /usr/local/texlive/2018basicのサイズは 546MB
Tex live 2022は全部インストールすると 5.2GB程度なので,かなりディスク容量を節約できたようです.
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